1stダウンは8カウントまで立つな!!
〔ポイント0収録曲「RING OF PUNKROCK」より〕
人間にとって大切なものが3つある。それは「希望」「勇気」そして「忍耐」である。
と言ったのはオレの敬愛する某作家なのだが、今こうして自分の過去を振り
向き見ると、まさにそれは的を射ていると確信できる。人は誰しも、希望がなければ
生きてはいけないし、その希望を実現させるためには現状を突破していこうとする勇
気がいるのだ。が、そのような努力をしたからぜったいに報われる、という保証はな
い。それもまた人生である。オレの周りを見ただけでも、音楽に見切りをつけてカタ
ギになったやつもいれば、世間に見切りをつけて自ら命を絶ったやつもいる。志し半
ばで無念にも病であの世に去ったやつもいれば、志ばかりが高すぎて自分を取り巻く
現状に愚痴ってばかりのやつもいる。
そう言えば「西暦2000年分の反省」と銘打たれたBEST OF JAGATARAのCDで、生前のア
ケミが言ってたな。「イジケたら終わりだぞ」って。「ロックからロックを取っちゃ
え!!」てのもあったはず。これは正しいです。自分を自分の理想で拘束してるから、
イジケ愚痴る結果になってしまうのですもの。極々狭いエリアだけで世界観をデッチ
あげ、「これ以上の努力〔苦労〕はない」と自分勝手に思い込んでいても、この地球
上のどこかには「それ以上の努力〔苦労〕をしている」人間が必ずいるのである。世
を制したボクシング世界チャンピオンなどがしばしば口にする「努力に勝る天才なし」
とは、その教訓を実体験で会得したからなのでせう。……たぶん。おそらく。きっと。
でもでもでも、自分の事をわざわざ「苦労人」だなんて嘯く間抜けはいただけません。
わらっちまう。そのようなことはあくまでも他人が評することですから。
で、
人生ってやつはギャンブルとおなじで、必ず風向きが自分に向く時期があるもんです。
それは追い風のときもあるし向い風のときもあるのだが……ともかく風向きが変化す
るのは確かなのだ。そこで大切なのは向い風のときは「決してイジケず耐え忍び」、
追い風の時は「自信を持って勝負はするがツケあがらず」の自制心なのである。自分
を自分で律することがギャンブラーの鉄則です。ってオレが話してたのって「ギャン
ブル必勝法」だったっけ?? なんか忘れて……ま、いいか。その内なるようになっ
から。んでもって、オレが思うにとどのつまり……。
人間にとって尤も愚かなことは「ツケあがる」ことなんだな。自信を持つ事と自意識
過剰になることはまったく異質のことなのですから。ってまたエラそうに言ってるけ
ど、実はオレも、パンクロックの狭いリングでちやほやされていい気になってた時期
があったわけです。そしたら来たね、天罰。ガツンとクリスマスプレゼント。《神様
とやらから出合い頭にカウンターパンチ喰らって、カウント8まで寝そべってたら、
浮き世は20年経過してたよ》ってなかんじ。いやいや、別に20年ただボーっと寝そ
べってたってわけじゃないですよ。
己の見識のあまさを痛感してからは、まだ見ぬ世界に独り突入、フリージャズのサッ
クス吹きもやったし、「ステ石」という単独多重録音の作品を当初の計画通り十年で
十本発表したし、8年前から文筆活動もしてるし、その甲斐あって詩集「問答」も発
行できたし、2001年からは「ナイフシンガー」〔フォークシンガーではない〕として
ステージに立ってもいるし、執筆作業のため1年ほど休養はしたけど、今現在ライブ
に復帰しているからこそ、今回の「サムライ・復刻CD」をプロデュースしてくれた
「いぬん堂」さんと縁あって出逢えたのですから。それからはなにやらトントン拍子
で、現在ホームグランドにしているライブハウスのスタッフは皆「リューシンさんっ
て、昔はそうだったの?」ってオドロキです。別に隠していたわけではないのですよ。
聞かれてもいないことを、わざわざ自分からペラペラ話す必要はないと判断しただけです。
それは、いつの日か、このときが来る事を知ってたから、……というか来ると信じて
耐えてたから。ほらほらほら、ちゃんと話の最後に重要ポイントの「忍耐」出てきま
した。これだ、さっき「ギャンブル必勝法」のとこで忘れてたの。つまり、「自分を
信じる力〔自信〕」こそが『忍耐』であり、その自信が『勇気』となって己に積極的
な行動を起こさせ、
ある程度の時間はかかるだろうけど、その結果として『希望』に至るのです。あくま
でも結果として。ま、簡単に言うと、自我なんて捨てちまえば、すべてなるようにな
る、ってなかんじでっする。それが証拠に、今回のCD復刻がきっかけとなり蘇生した
「サムライ」に、新たな出帆の日が巡ってきたのですもの。
これが宇宙〔R&R〕の法則ってやつです。
1stダウンのダメージから回復するための8カウントが、たとえ20年であろうと、それ
を準備期間と考えれば、大した時間ではありません。ほんとの勝負はココからです!!
追伸
このたびの「CD復刻」ならび「サムライ蘇生」に協力・応援してくれた皆さんに、心
から感謝申し上げます。ありがとう。そしたら始めよう。《ここに地終わり、海はじ
まる》
S.リューシン 2004年12月24日配付(ディスクユニオンフリーペーパー
「Follow-Up」寄稿)
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